2006年6月、それは一本の電話から始まりました。「東福寺です。栃沢のお茶の木を植木としてほしいのですが、ご用意いただけますか?」
栃沢、そして静岡にお茶を伝えてくださった聖一国師が開山された大本山東福寺。ご依頼に応えるべく村の古老を訪ね、古老の育種されたものから病気に強いものを選び、挿し木することにしました。
そして11月4日、栃沢の住民を中心に関係者含め41名が、育った苗木と共に京都東福寺へ向かいました。東福寺誌によれば「聖一国師500年忌に34輩焼香す」とありますから、栃沢の住民が東福寺に伺うのは実に266年ぶりとなりました。
その日は東福寺に1泊させていただき、翌朝開山堂で国師に焼香し、普門院で管長猊下にご挨拶ののち法堂前の中庭に会場を移し植樹することとなりました。
うまく育ってくれているか気になり、3年ほどは年に6回ほど足を運びました。途中育ちが悪かった所も栃沢から畑の土を運び込んだところ、これがいい事に。以来、毎年2tダンプを走らせ、栃沢の土と東福寺の土、そして友人からいただいた聖一国師が修行された径山寺の土を混ぜて用土としております。その後、地元の大川中学校の修学旅行では必ず東福寺で茶樹の植樹を行うようになりました。苗は子供たちが挿し木をし、1年間自分たちで水やりなどの管理して育てたものです。
茶の樹の管理についてはこちらのブログにも掲載されています ↓
東福寺に植樹した翌年、茶苗の返礼にと法務部長さんら6名が栃沢を訪れ、東福寺の紅葉の苗木20本を栃沢の集会所に植樹していただきました(その後枯れる危険を考慮して、集会所に1本を残し町内各所に分散しました)。
茶樹の植樹に尽力いただいた古老が亡くなりました。生前「栃沢に合う茶の樹を探し育ててきた。一つでも世にだしてほしい」と語っていたと聞き、静岡県茶業センターで試験研究していただき、1点に絞り製造できるようになりました。このお茶に名前をということで、東福寺管長猊下に「名付親になっていただきたい」とお願いしたところ、ご快諾いただきました。付いた名前が東福茶宴で呈茶される、「深澤清馥(みさわのせいふく)」です。
深澤清馥の畑ができるまでのあれこれはこちら↓
猊下から「お披露目は如何されますか?」と問われ、その時は「何も考えておりません」としか返せませんでしたが、前年から呈茶が話題になっていたこともあり、後日方丈の縁側をお借りする案で内諾を得、それがご縁で2019年に「東福茶宴」を開催することとなりました。
折しもコロナ拡大の折、あれこれと対策をして100名限定で開催。わずか2時間でした。その後「来年も」と声をいただき、200人限定、300人限定とありがたいことに回を重ねるごとに膨らんできました。聖一国師と茶のこ゚縁をいただき、1年間無事に過ごせたことに感謝する意味で、無料の茶振る舞いとしました。冬のひと時、お庭を拝見しながら縁側でほっとしていただければ幸いです。
年末大晦日に、東福寺では除夜の鐘をつくと福茶が配られますが、この福茶も栃沢のお茶です。
東 福 茶 宴
東福寺御開山様(聖一国師)は宋の国 径山万寿禅寺に学び、 茶を故郷 静岡に伝えたとされる静岡茶の祖です。 修行されていた径山で「径山茶宴」という茶会が行われていたという故事に習い、ここ東福寺での茶会を「東福茶宴」と称しました。 2020年から毎年12月上旬に行われる無料の茶振舞いは、 御開山様の故郷 静岡と縁ある人々によるおもてなしです。 茶宴は、㈱ロイヤルブルーティージャパンの商標です。
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